図3-4は各国の失業率の変化である。各国とも異なった動きを示している5。タイは、通貨危機前の失業率は穏やかに下落しており、しかも1パーセント台の低水準であった。しかし1998年に失業率は3.4パーセントに急上昇し、1999年はわずかに下降したが、1990年代はじめの水準と比較すると、未だに高い水準にある(3パーセント)。
図 3-4 失業率の変化
フィリピンはタイ、インドネシアに比べると、失業率ははるかに高い水準にある。失業率は、1993年から95年までの9パーセント台から96年、97年には7パーセント台に下降したが、アジア通貨危機後、再び9パーセント台に上昇してしまった。フィリピンのこの高水準の失業率の原因は、実質GDP成長率がアジア通貨危機発生以前から低い水準にあったこと、地域間格差が大きく地方の開発が進んでいないことを挙げることができる。
インドネシアの失業率のデータは経年で取られていないが、1996年から98年にかけて次第に上昇しているように見える。また、IMFのInternational Financial Statisticsによると、1996年の失業者数は360万人であるが、インドネシア政府の資料によれば1999年の失業者数は600万人と、1.7倍に増加している。
5 International Financial Statisticsの失業率のデータは、インドネシアは記載されておらず、フィリピンもすべての期間にわたって記載されているわけではない。しかし両国とも雇用者と失業者のデータは記載されているため、この数値を用いて失業率を計算している。